アキバ系セレブリティ

きのこ 第三章・すべて人生はギャンブル

一つ大きなサイトを軌道に乗せたことで、いろんな伝手から「売り出し中の新人キャラクターデザイナー」と接触することも多くなってきました。
いや別に私が売ったわけじゃなくて技術的なことや企画を通したのは社長やマツバラさんで、私はあんまり…携帯だってIP権持ってなきゃどうしようもないんだけどね…できる範囲でしかアドバイスできないけどさ。
「東京にいってエロゲの原画をやりながら癒し系キャラデザイナーを目指したい」
やめとけ。地元にいたって当たるときは当たる。エロゲは好きじゃないと苦痛。
「安い仕事ばっかりで嫌になる」
安いなら記名入れさせてほしいとかいろいろ、交渉できる余地はある。
それで高いの取れるようになったらそのクライアント蹴っても食えるようになる。

基本的に人ごとだからバッサリです。ていうか私は自分が生活するだけでいっぱいいっぱいです。
そんな中で一人の女性イラストレーターと知り合いました。
地道に頑張った彼女。自主出版詐欺にひっかかったりとか大変な目に遭いましたが、うまく企業のイメージキャラクターの仕事を獲得でき、法人化もできました。
ある日久しぶりに会ったら、おなか大きくなってました。
「結婚したんです。子供できたし」
そんなこと一言も…
「マネージャー(ちょっと売れるようになってから、そういう人がついて法人化した)がね、仕事に差し支えるから言うなって…だからぎりぎりまで言えなかったんだ」

「今の仕事、なんか言われるままに描いてるだけで、正直つまらないです。自分のサイトですら結婚報告も妊娠報告もできないし…」
う…うーん…
「でね、まあこうやって直にあったらわかっちゃうわけじゃないですか。そしたら別のところから妊娠ブログ連載しませんかって言われたんだけど、ネットの専門家としてちまきさんに判断を聞きたいんです」
ネットの専門家ねえ…

「女性クリエーターにとって妊娠出産は大きなネタではありますが、同時にアンチがつきやすい話題であることは間違いないです。そういう意味ではマネージャーがこの時期まで隠させたのも賢明だと思います。
でも基本的にどうするかは自分で決めていいと思いますよ、自己責任で」
「たとえば芸能人や漫画家でも、結婚出産を経て、才能の輝きが失われちゃう人は結構居ますよね?私生活を書くというのは、自分自身を浪費することに繋がるからじゃないかと思います。想像だけど」
「あなたの周りの人にとって、あなたは売れるかもしれない商材なわけで、最大限高く売りたいのは当然です。あなたが結婚して、出産して、という個人的ライフスタイルとは関係なく、そこは普遍なんです。
そう言ったことを知った上で書くんなら悪かないと思います。そうでないならチラシの裏に書いといた方が痛い目見ないで済むんじゃないかしらね。
私がこういうことをストレートに言うのは、あのマネージャーがついてる限り、私にうまみはゼロだから、あなたが売れても売れなくても収入に差が無いから。
でもこの質問に答えた手間賃はどっかで回収したいから、もうけ話があったら教えてね」

私みたいな下っ端ですら、「自分の取り分は確保しなきゃいけない」という実に小狡いこのゲームの外に居ることはできません。そうやって自分と仲間とを食わせて行かなきゃいけません。恐ろしいことだ。
しかしそれは生きていく限りは変えられないことでもあるし、痛みや不確定要素の無い人生なんかありはしない。あったとしても、それは死んでいるのと変わらないだろうと、アキバの日々が私に教えてくれたことでもあります。

…別に結婚した彼女が羨ましいわけじゃないっすよ!
…グスン。


きのこ 注釈

*CP権
キャリア公式のサイトを持って、課金モジュールを使わせてもらえるのは「公式コンテンツプロバイダ」という資格のある業者のみ。近年参入業者が激増したので、これを取るのが結構大変。

2008年04月26日 14:25
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